地下通信 [chika-tsûshin]

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2005年 11月 18日

書評=「日経新聞の黒い霧」(大塚将司)

c0062756_11264553.jpg 爆笑。いかに日本のマスコミが病んでいるか、実によく分かる良著。
 著者は日本経済新聞の経済部などで長く活躍した記者。鶴田卓彦という腐りきったトップの愚行と不正を現役部長として勇敢にも告発し、いったんは懲戒解雇処分を受けたものの裁判闘争で撤回させた猛者だ。
 本書からは、鶴田という田舎者の小さな「独裁者」が「大手マスコミ」の中でデカイ顔をして跋扈し、10年もトップの座に君臨し、愛人の経営する高級クラブに入り浸り、にもかかわらず周辺の茶坊主どもはひたすら胡麻を擦るだけという絶望的な「言論機関」の姿が浮かび上がる。「ジャーナリズム」を掲げて社会を律しようとするものが、自らのアタマの蠅も追えぬ滑稽は、日経に限らぬのだろう。
 にしても、もっとも笑ってしまったのは以下の部分。
 
日経新聞の図書室も『噂の真相』は取っていて閲覧できるのだが、『噂の真相』と『選択』の2誌だけは資料室の担当者に申し入れないと読めないことになっていた。表向きは「自由に閲覧されると盗まれる」との理由だったが、社内では「誰が読むのかチェックするためだ」と陰口を叩く者もいた。(242ページ)

 自由に閲覧されると盗まれるって一体…(苦笑)。もちろん「誰が読むのかチェックするためだ」という方が「正解」なのだろうが、「言論機関」の資料室で言論に制限が加えられているのだから、これこそまさにビョーキだろう。日経社員はこういうことに誰も文句を言わぬのか。(講談社、1890円)
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by tikatusin | 2005-11-18 11:29 | 書評
2005年 11月 01日

いくつかの良書など

 反フェミ・靖国大好きの狂信的オボッちゃまが官房長官、植民地の血を吸って太った財閥の下品さ溢れる末裔が外相。ただただ薄ら寒く見える青き秋の空。

c0062756_10522794.jpg 「下山事件 最後の証言」(柴田哲孝) 抜群に面白い。事件に深く関与したとみられる「亜細亜産業」。ナゾの貿易会社に籍を置いたのが著者の祖父。そして叔父や叔母、あるいは母の口から飛び出す下山事件と祖父を取り巻く人物たちの「点と線」ー。中でも「亜細亜産業」総帥だった矢板玄との「単独会見」のやり取りなどは圧巻だ。
 事件について「ほぼその全容を解明できたと確信している」(第5章)というのが実際のところどうなのか、「下山病患者」でない私には図りかねるが、下手なサスペンス小説よりよほどスリリング。事件はやはり、満鉄や軍閥、右翼、左翼、GHQ、CIA、そして戦後の自民党政権と米国等々をつなぐ線が交錯する中で真相が闇に葬られていったのだろうと深く納得する。ただ、やはり「下山病患者」でない読者の立場からいえば、事件をめぐるあまりに細かな「復習」部分には少々辟易したのも事実(「下山病患者」にとっては重要なのだろうが)。しかしそれでも実に面白く、一読の価値ある一冊。(祥伝社、2100円)

c0062756_10543912.jpg 「噂の女」(神林広恵) 昨年4月に「黒字休刊」に踏み切った『噂の真相』で16年間活躍した「女性デスク」による「ウワシン戦記」。これも抜群に面白い。先に紹介した編集長、岡留安則氏による「『噂の真相』25年戦記」(集英社新書)よりも現場の生々しい様子が描かれて読ませる。バブル真っ盛りのころに短大を卒業して損保会社、広告制作会社などに務めていたノンポリの女性。それがウワシン入りし、戸惑いながらもスキャンダル編集者として立派に育っていく(?)姿には興味シンシン。その果てに東京地検特捜部による極めて不当な「報復捜査」を受け、名誉毀損で前科者(執行猶予中)にさせられてしまうわけだが、限りないノーテンキぶりを発揮する岡留編集長とは対照的に、こんなに悩んで傷ついていたこと初めて知った(笑)。にしても日本の司法は絶望的に病んでいる、とあらためて思わせる。それに和久峻三って、なんてイヤなヤツ!(笑)。で、ウワシンってやっぱ面白かったなぁとあらためて実感。(幻冬舎、1500円)

c0062756_10534132.jpg 「大仏崩壊 バーミヤン遺跡はなぜ破壊されたのか」(高木徹) NHKの現役ディレクターにして「戦争広告代理店」(講談社)で評判を呼んだ著者の新作。民衆の期待を背負って登場したアフガニスタンのタリバン政権がアルカイダに“浸食”され、異様な政体へと変質していく様が「大仏破壊」を軸に興味深く描かれている。関係者への丁寧な直接取材を基にしており、大手メディアの報道では伺えなかったタリバン政権とアルカイダの関係が鮮やかに浮かぶが、最大の「悪役」であるオサマ・ビンラディンを極単純な「悪役」に描いて疑いすらもっていないようなのはどうしたことか。他の人物の人間像が一定程度浮かぶのに比して、ビンラディンに関しては全く人間像が描かれない。ビンラディンという怪物がなぜ生まれたのか、米国等々との悪縁もほとんど触れられない。意図的なのか、意図せざるものなのかは不明だが、肝心な部分を避けて漂流している感が拭えない。しかしそれでも読み物としては面白く、アフガニスタンという国で何が起きたかをおさらいするには一興か。(文藝春秋、1650円)
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by tikatusin | 2005-11-01 10:54 | 書評