地下通信 [chika-tsûshin]

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2005年 01月 17日

外交文書

 ここ数日間、仕事の都合で古めかしい外交文書の山に埋もれていた。1965年、日本と韓国が国交を正常化するに至った外交交渉に関する韓国側文書である。韓国政府が40年ぶりに秘密指定を解除して公開されたのは対日請求権をめぐる部分で、全体から見れば膨大な文書のごく一部に過ぎないが、それでも総数は1200ページに上る。当たり前ながら文書のほとんどはハングル。文字が潰れたりしている部分も多く、判読作業は困難を極めた。

 内容は既に各メディアでも報じられた通りだが、隅々まで目を通して浮かび上がった事実は極めてシンプルなものだった。日本の植民地支配によって被った個人の被害に関し、交渉に当たった日本政府当局者はもちろん、韓国側当局者にも人道的配慮を図ろうという気配など全くないことだ。一貫して、どこにも、まったく、見事にない。失礼な話だが、読んでいて苦笑してしまうほどだ。

 交渉に臨む日本の態度にはどこか余裕すら感じられる。一方の韓国は必死だ。そこにつけ込むかのように植民地支配に伴う個人財産や被害補償などの対日請求権を徹底的に消滅させようと狙う日本。これに対し朴正煕が軍事クーデターで政権を奪取した韓国は、経済開発計画に投入するため日本の援助資金を一刻も早く手にしようと躍起になっていた様子が鮮やかに浮かび上がる。

 結局、請求権は5億ドルの経済協力と引き替えに「完全かつ最終的に解決」されたことになったのは周知の通り。
 交渉の中で経済協力は請求権の対価だと訴える韓国に対し、日本はあくまでも純粋な経済協力だと反駁するという「原則論」の応酬があるにはあったが、文書のどこをひっくり返しても被害者への謝罪や配慮、植民地支配への回顧の言葉はなく、韓国側も被害補償は「われわれがやるから気にするな」と言わんばかりの姿勢に終始していた。

 もちろん当時の朴正煕政権は日本から引き出した資金を元にして経済発展の基礎を築き上げ、今の韓国の繁栄はその延長線上にあることも事実だろう。しかし、そんな建前を振りかざしても被害者たちは納得しない。個を踏みつぶして顧みることすらない国家の冷徹に慄然とする。

 被害者団体はこれまで日本政府の責任を求めて日本で提訴し、敗訴を続けてきた。今回の文書により日本政府の責任を問う声が弱まることはないだろうが、韓国政府への批判が高まるのは間違いない。被害者団体からは「日韓の権力者の野合による請求権の封殺だ」との声明が出されたが、まさに至言だろう。(1/17)
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by tikatusin | 2005-01-17 16:29