2005年 08月 27日
目の回るような忙しさで更新が滞り気味。そんな合間に外電などで目にした世界のニュースから。 オーストラリアのハワード首相。同国の日刊紙ヘラルド・サンの記者らが取材源秘匿の原則を守り抜いていることで有罪判決の危機に陥っていることに関して26日、「彼らが職業の倫理観によって行動していることを知っているし、その行動を尊重する」と言明、メディアの取材源保護を法律的に裏付ける措置の検討を指示したという。 米国ではCIA工作員名漏洩事件で取材源開示を拒んだニューヨークタイムズ紙の記者が法廷侮辱罪で収監されたのは周知の通り。アフガンやイラク戦争ではブッシュと歩調を合わせたハワード首相だが、それでもブッシュなどよりはよほど真っ当な神経を持っているようだ。 ベネズエラのチャベス大統領。26日、首都カラカスでの演説で「私に何かあれば、ブッシュの責任だ」。米キリスト教保守派の指導者、パット・ロバートソンが22日、自らが運営するクリスチャン放送網(CBS)でチャベス大統領を暗殺するべきだと主張したことを受けた発言。 パット・ロバートソンはキリスト教右派色の強いブッシュ政権に影響力を持つ。社会主義的な反米路線を明確にするチャベスをブッシュ政権が苦々しく思っているのは周知の事実だが、それにしてもロバートソン発言はあまりに“率直”。 「我々は彼(チャベス)を排除する能力があり、それを行使する時期がきた」「独裁者を排除するのに(イラクのように)2000億ドルを使って戦争をやる必要はない。秘密工作員に仕事をやってもらう方がずっと楽だ」 チリのアジェンデ政権など、自らが気に食わねば民主政体だろうが何だろうが転覆工作を実行してきたのが米国。ブッシュにすれば「分かってるから余計なこと言うな」ぐらいが本音か(笑)。ロバートソンなる人物を詳しくは知らぬが、恐らくは日本などにもいる超エキセントリック右派なのだろう。このあまりに“率直”な発言については中南米19カ国の外相が26日、アルゼンチンで開いた会合での宣言でロバートソンへの「法的措置」を求めている。 そのブッシュ大統領。ギャラップ社が26日発表した世論調査結果によると、ついに支持率が40%に転落。ブッシュ支持率として最低を記録したばかりか、8月の平均支持率も43%となり、第2次大戦後の歴代大統領の月別支持率ではウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたニクソンに次ぐ史上2番目の低さなのだという。 最大原因は言うまでもなくイラク。泥沼化する一方のイラク情勢に加え、夏休み中のブッシュが滞在するクロフォードの私邸前で続く反戦行動(イラク戦で息子を失った母親の行動がきっかけとなって拡大している。詳しくはここを参照)なども大きく影響しているようだ。21日にはCNNがイラクの大量破壊兵器開発の情報を誇張した過程を検証する1時間番組を放送。番組タイトルの「完全なる間違い」は辛辣で、ブッシュを取り巻く世論は厳しさを増している。ようやく・・・という感じではあるけれど。 一方、韓国では26日、1965年の日韓国交正常化に至る全外交文書を公開。今も多くを非公開としている日本とは対照的に情報公開への積極姿勢を示した。 加えて韓国政府は日本の植民地支配での被害者に対しても個人補償に乗り出す方針で、一方で従軍慰安婦などに関しては同日、「日本に法的責任が残っている」として日本を追及する立場を発表した。 少し分かりにくいが、簡単に言えばこういうことだ。軍事クーデターで政権を奪取した朴正煕政権下で進められた対日国交正常化交渉では、開発資金獲得を優先させた朴政権が個人請求権の補償義務は韓国政府が行うと約束していたことが外交文書で裏付けられた。しかし、従軍慰安婦などに関しては当時の議題となっておらず、個人補償は韓国政府が行うが、従軍慰安婦などに関する法的責任は今も日本に残っている、と。 誤解を恐れずに言えば、実はこれ、日本にとって「絶好のチャンス」なのではないか。周知の通り今も激しい反日感情が残る韓国だが、個人補償に乗り出す韓国政府を何らかの形で日本が協力、支援すれば、韓国内の反日感情は大幅に緩和されるはず。いわば「過去清算」に乗り出した韓国政府の動きに日本も“同乗”するのである。 1965年の日韓基本条約は請求権について「完全かつ最終的に解決された」としている。また個人補償の責任が韓国政府にあったことが外交文書で確認されたとはいえ、開発資金獲得を優先させたい朴政権につけ込む形で日本が交渉を進めたのは厳然たる事実。日本の「道義的責任」に対する韓国民の反発は今も強く、これからも弱まることはないだろう。 だが、今回の韓国政府の動きを契機として日本政府が側面支援に乗り出し、従軍慰安婦問題などでは何らかの補償を行うなどの政治決断を下せば、韓国民の対日感情は大幅に改善され、いわば韓国政府と一体となっての「過去清算」が実現するのではないかーー、というのが「絶好のチャンス」という理由だ。 だが、これは完全なる真夏の夜の夢。ブッシュの飼い犬・コイズミは、飼い主様の支持率が急落している中でも9・11総選挙に向けて意気軒昂。韓国の外交文書公開や個人補償方針など全く興味がないらしく、従軍慰安婦への法的責任問題に関しても26日夜、記者団に対して「韓国の政府と立場は違います」と一言だけ。いやはや・・・、だ。
by tikatusin
| 2005-08-27 13:39
| 罵詈讒謗
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